株芝居を見よう!!
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株芝居屋



 近この金融街に出没すると噂される株芝居屋。我々は苦労の末、神出鬼没のこの老爺と接触することに成功。取材協力を得ることができた。以下は、その記録である。

―― 写真を併載したいので、ポーズをいただけますか?
 腰が痛いもんでな。こんなもんで勘弁しとくれ。
―― パシャリ。結構です。それでは改めまして、今日はどうぞよろしくお願いします。
 こちらこそ。どうぞよろしく、お兄さん。
―― ではまず、お名前を教えてください。
 株芝居屋じゃ。
―― え……っと、よろしければ本名を。
 ええ。ですから株芝居屋でございます。
―― あっ……おいくつでいらっしゃいますか?
株芝居屋 いちおくまん歳。
―― ほおぉ……見えないです。お若くしておいでだ。
株芝居屋 ほほ。よく言われます。
―― ちなみに3サイズは?
株芝居屋 上から90、59、84
―― ほおおぉぉ……見えないです。ナイスバディでおいでだ。
株芝居屋 ほほほ。よく言われます。
―― そんな若くてナイスバディな株芝居屋さんは、この金融街でお芝居をして廻ってらっしゃるとか?
株芝居屋 ええ。まぁ、趣味みたいなもんですがな。
―― 失礼ですが、もうご退職なされた?
株芝居屋 いえ、退職と申しますか、自営業みたいなもので。一応まだ現役でやっとります。
―― それは素晴らしい。どのようなお仕事なのですか?
株芝居屋 仕事と申しますか、いわゆる専業トレーダーというヤツですな。
―― なるほど。それで株のお芝居を。
株芝居屋 ほほ。まぁ、お粗末なもんですが。
―― とんでもない。しかしそうなると、トレーダー歴は、かなり長いのではないですか?よろしければ、これまでの経緯などお話してくれませんか?
株芝居屋 そうですな。はじめて株取引をしたのは、大学3年のときでした。
―― ほぉ。
株芝居屋 はじめは貯金をちょっと増やしてやろうとか、経済の勉強になるだろうぐらいの考えでした。いちおう経済学部だったもので。だがしかし、これを続けているうちに、専業を目指したいという気持ちが強くなっていった。
―― ほぉほぉ。
株芝居屋 しかしこればかりは、なかなかどうなるかわからない。そこでわしは、大学院に進み、モラトリアムを延長しました。そして、自分にひとつの条件を課したんです。在学中に一定の結果を出せれば専業トレーダーを、ダメならば就職活動をすると。
―― ほぉほぉほぉ。それで、結果はどうだったんですか?
株芝居屋 残念ながらダメでした。収益を上げることはできました。しかし、それだけで生活できるとは、とてもじゃないが言えない額でした。それに、当時の手法は、いつ負け出してもおかしくないような、不安定な手法だという自覚もありました。私はとても口惜しかった。かつて、人生でこれほどいれこみ、努力したことはなかった。それだけの努力をしても、結果を出せなかったということが、とても口惜しかったんです。しかし、私は当初の条件通り、就職活動へと移ることにしました。
―― お察しします。それは無念だったでしょう。しかし、それだけ時間をかけたことをキッパリ切り捨ててしまうというのも、少しもったいない気はしますが。
株芝居屋 ほほ。いえ、やはりなかなか諦めきれなかったのです。就職活動をしたといっても、応募したのは証券会社の運用部門。証券ディーラーや、ファンドマネージャーばかりでした。
―― ほぉ、なるほど。それならば確かに。
株芝居屋 ええ。もう一度相場を張れる。そして、ゆくゆくはもう一度専業トレーダーを目指せる。再起の足がかりとなる。そう考えたのです。
―― ほぉ。それから。
株芝居屋 運よく証券ディーラーとして採用してもらうことができました。もともと、いわゆるデイトレードでやっていたので、マッチングしやすかったのかもしれません。
―― なるほど。確かに専業トレーダーとしてやるならば、ファンドマネージャーよりはディーラーの方がやり方は近いように思います。
株芝居屋 ええ。それからディーラーを3年勤めました。はじめは全く上手くいきませんでしたが、まぁ、続けているうちに少しずつ収益を上げることができるようになった。しかし、ディーラーをやりながらも、私は個人に戻ったときのことばかり考えていました。個人に戻ったらこうしよう。このやり方なら個人でも通用するだろう、とか。
―― ほぉ。しかし、ディーラーを続けるという選択肢はなかったのですか。ディーラーは成績が直接給与に反映されると聞きます。収益性は十二分にある。むしろ安定性という意味では、専業トレーダーより圧倒的に強いといえます。
株芝居屋 考えなかったわけじゃない。ただ……なんというか。私が株をやっとるのは、もちろんカネ儲けをしたいというのもあります。しかし、同じぐらい、自分の腕一本でカネを稼ぎ切りたいという思いも強かった。確かにディーラーという職業は、自分の技術次第で収益性を高めることができますし、安定性も高いでしょう。しかし、やはり会社員であることに変わりはない。そのことが、私の目的とは、少しずれる部分があるわけでして。まぁ、ここは個々人の価値観によるでしょうが。
―― なるほど。いえ、よくわかります。私も今の仕事は、単なる腰かけに過ぎないですから。自分の目的のためには、やはりリスクを恐れてはならない。同意します。
株芝居屋 そ……そうですか。ここでその発言は、ちとハイリスク過ぎるとも思うが……。
―― ともあれ、専業トレーダーへと舞い戻られたわけですね。きっかけは何だったのですか?はじめから3年と決めていらっしゃった?
株芝居屋 まぁ、なんとなしに3年ぐらいだろうと考えてはいました。しかし、潮目がね、変わったんです。
―― それは、相場つき?
株芝居屋 それもあります。あるときを境に、あきらかに相場つきが変わり、資金が入ってきた。じゃがそれだけではなく、法的な規制が緩和されたり、コストが大幅に小さくなったり、とにかく、個人トレーダーを取り巻くあらゆる環境が、目に見えて好転し始めた。仕掛けるならば、今しかあり得ない。そう思いました。
―― そうして会社をお辞めになった。以来、専業トレーダーとして大成なされたわけですね。
株芝居屋 そんなに大層なものではないが。それからも山あり谷ありで。それでもまぁなんとかコツコツ生きてはこれましたな。
―― なるほど、わかりました。それで株芝居屋さんは、トレーダーとして得た知識や経験を、お芝居にして教えて廻っているというわけですね。
株芝居屋 いや、まぁ、教えるというような高尚なものじゃない。ただ、世間一般の株に対する認識のようなものが、なんというか、ズレているように感じたもので。株というのはこういうものだという、正確なところをお話しするという、なんというか、そういうお芝居なんじゃ。
―― そうですか。しかし、すでにお弟子さんもおられるようですが?
株芝居屋 ほ?
―― あちらにいらっしゃる、緑髪の女性は。
株芝居屋 ああ。お手伝いをね、お願いしてるんですよ。元気のいい娘さんで。
―― しかし彼女も株をされていると伺いました。どうですか?見込みがありそうですか?
株芝居屋 ある……というか……
―― ……?
株芝居屋 ……既にわしより稼いでいる(ボソッ
―― あっ…
株芝居屋 …………
―― えっと、今日は長い時間本当にありがとうございました。
株芝居屋 いえいえ、こちらこそ、ご苦労様でした。
―― 最後に、なぜカバのパーカーをお召しになられているのか、教えていただけますか?
株芝居屋 あー、これはですな。かぶ かぶぁ かぶあ かばあ かばぁ かば
―― あーやっぱり結構です。どうもありがとうございました。