株芝居を見よう!!
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第2編 アフター



……………………チッ

ほほ。
どうですかな?株の調子は?

んん〜……勝てない…。

ほほ。

いやね、ちゃんと勝つこともね、あるんだよ。
でもね、なんだろう……結局負けちゃうんだよね。

ほほほ。
今ポジション持っとるのか?

うん。さっき買ったヤツなんだけど
……あーもうっ!ダメだっ!!売っちゃえ!! (ビシッ

ほほ。

まぁた負けちゃった……

ふむ。
今回は残念じゃったな。

なんかね、こんな感じなんだよ。
アタったりハズレたりなんだけど、結局なんか負けになっちゃってるんだよね。

ほう……
ちなみに、じゃが……

へぇ?

今のヤツはなんで買ったんじゃ?

なんでって…それは上がると思ったから…だけど……

ほほ。
では、なんで上がると思ったんじゃろうか?

なんでって……そりゃなんとなく……ですけど!?

ほほ。なんとなくか。
確かに株をやっとったら、直感的に仕掛けねばならん局面に行き逢うことも、時にはあるじゃろう

へぇへぇ

しかし、いつもなんとなく、いわば運任せで売買をしていては、その結果もやはり運に左右されることになるじゃろうな

へぇ。
ほんじゃどーしたらいいの?

根拠を持つことじゃ。
いつも自分なりの理論や根拠を持って売買をすること。
そうすることで、その結果は単なる運に基づいてではなく、おまいさんの理論に基づいて表れることになるじゃろう

なるほど。
ところでその理論とやらは、もちろん教えていただけるんでしょうね?

ムリじゃ

へぇ!?

こればかりはな、投機家それぞれの性格やら目的なんかによって全く違ってくるものなんじゃ。
だから“誰にとってもこれが正しい”というものは恐らく存在しないし、教えることもできない。
少なくともわしにはムリじゃ

へぇ。
ほんじゃどーしたらいいの?

自分で考え抜くこと。
実際の相場と向き合って、試行錯誤しながら自分の手で編み出していくんじゃ

へぇへぇ

もちろんその過程で誰かの意見や考え方を参考にするのもいいじゃろう。
じゃが、最後は自分で理論を組み立てなければならん。
まぁこれもまた自己責任ってヤツじゃな

なるほど、わかった。それじゃあちょっと考えてみるよ

ほほ。いくらでも悩むがいい。
こればっかりは、一朝一夕でどーなるもんでもないからの



――――― 1分後 ―――――



……………………チッ

ほほ。
どうですかな?株の調子は?

あ、うん。今度はちゃんと根拠を考えて買ってみたんだけどね

ほほ……(え?早くね?)

でもなんか上がりそうで上がらなそうで
……あ、下がってきちゃった!

ほほ。
まだ売らんのか?

うーん、どうなんだろ?まだ大丈夫のようなもうダメのような
……あーもうっ!また下がってきた!!じゃあ売るよバーカ!!

ほほ

あーあ……まぁた負けちゃった

ほほ。
まぁ今回も残念じゃったな

なんでぇ?
ちゃんと根拠を持って買ったのに……

まぁアレじゃな。
しっかりとした理論に基づいて売買したとしても、アタるときはアタるし、ハズレるときはハズレるんじゃよ

へぇ!?じゃあなんですか!?
けっきょく運任せでやってるのと変わらないってことですか!?

ぁいや、待て。そうではない……

それじゃあ理論とか根拠とか考えたってムダじゃない!
もうっ!あたしの1分返してよーーーーっ!!

待て落ち着け。小学生がヒスるな

ハッ!取り乱しました

根拠を持つのはな、確かに“勝ちやすくする”という意味もある

へぇへぇ

じゃがそれ以上に、“負けを認めやすくする”という意味が大きいように、わしは思うんじゃ

…………なんか禅問答じみてきたな。
勝つために負けやすくするとはなんぞや?

たとえば1分前のおまいさんのように、全く何の根拠もなく株を買ったとしよう

へぇへぇ

その結果、運よく上がってくれればまぁ文句はない。
じゃが、もし下がってしまったとしたら、おまいさんはどこで損切りをするかな?

へぇ?
……うーん、どこだろ?

とまぁよくわからないはずじゃ。
上がることしか考えていないわけじゃからな

へぇへぇ

しかし、そうこうしているうちに株価はどんどん下がっていって、ときには致命的な損失につながってしまうこともあるじゃろう。
そーゆー痛い負けをちょいちょい喰らっていると、なかなか利益は残ってこないもんじゃ

あー言われてみれば。
なんかヤラレるときデカイんだよなぁ……

ほほ。
では一方で、根拠を持って株を買ったしよう

へぇへぇ

こちらも運よく上がってくれれば、やはり文句はない。
じゃが、もし下がってしまったとしたらどこで損切りをすればよいか、今度はわかるんじゃないかな?

あぁーーっ!

ほほ

全然わからんっ!!

……根拠が崩れたところ、と言うことができないじゃろうか。
しっかりと根拠を持って仕掛けたのなら、逆にその根拠が崩れてしまったところも把握できるはずじゃ。
それこそが負けを認めるべきところ。すなわち、損切りすべきところではないかの

あぁーーっ!

……まだちょっとわかりにくいかの?

いや、今度はなんとなくわかったけど……
う〜ん、まだちょっと抽象的ってゆーか……

ふむ。そしたら……どうするか……

あ、じゃあ例えばさ、さっきの売買!
あたしのさっきの売買だったら、どこで損切りしたらよかったのかな?

ほほ。そうじゃな。
ではさっきおまいさんが株を買った根拠を教えてくれ

うん。
あのね、いわゆる押し目買いだったんだよね

ほほう

なるほど。トレンドフォローの基本じゃな。
ほんで、結果はどうなったんじゃ?

そのあともちょっとだけ上がったんだけどね。
すぐに落ちてきて、結局おっきく下げちゃった

ふむふむ。
では、おまいさんが実際に損切りしたのはどこじゃったのかな?

ほほ。大体わかった

はよ。答えはよ

まず始めに、おまいさんは“ここで下げ止まって、こっから次の上昇が始まる”と言った。
これがこの株を買った根拠だと考えていいじゃろう

へぇへぇ

つまり逆に言えば、もしここで下げ止まらなければ、おまいさんの根拠は崩れたと考えるべきじゃなかろうか?

へぇへぇ。なるほど確かに

へぇ。けっこー早いんだ

もちろん損切りを早くすべきか、我慢すべきかはその時々で変わるじゃろう。
じゃが今回の場合は、そんぐらい早くせねばならんと言えるじゃろうな

へぇへぇ

とまあこのように、投機というものは勝ったときのことだけを考えていてはなかなか利益が残らんもんじゃ。
もし自分の考えと逆に動いた場合どう対応すべきか、それをあらかじめ決めておいた方がいいじゃろうな

なるほど。仕掛ける前に損切りするメドを立てとかないと、自分の考えと逆に動いたときにどーしていいかわからなくなっちゃって、いたずらに損失をふくらませることになっちゃうんだね

そーゆーことじゃな。
投機で勝つということ、きっとそれ以上に大切で、難しいのは、大きく負けないということじゃ。
これができるかできないかで、結果は大いに変わってくるじゃろう。わしの経験から言ってもな

なるほど、わかった。それじゃあ今度はそんなふうにやってみるね

ほほほ。まぁ疲れん程度にな



――――― 1分後 ―――――



……………………おっ!

ほほ。どうですかな?株の調子は?

おらっ! (ビシッ
えへへ。利食っちゃいましたっ☆

ほほ。今回はやりましたな。
して、いくら儲かった?

1円!

ほ……そうかぃ。
案外少なかったんじゃな

うん。
でもね、最初から1円抜きのつもりで買ったから、大勝利だよ

ほほう。なんというか、堅実なんじゃな。
もっと大きく抜きたいとは思わんかったのか?

う〜ん、できたらそうしたいんだけど、なんてゆーかさ、やっぱりもっと勝率を上げたくて。
そしたら小幅でさっさと抜いた方がいいのかなって思って……

ほほほ。
確かに勝率を上げようと思うのは悪いことじゃない。
しかし、例えば……そうじゃな……

へぇ?

おまいさん、1分前にわしが言ったことをまだ覚えてくれているじゃろうか?

うん。
買う前に損切りするメドを立てときなさいって話でしょ?

そうじゃ。
では今回の売買、めでたく勝つことができたわけじゃが、もし負けていたとしたら、おまいさんはどこらへんで損切りするつもりだったんじゃろうか?

ほほほ。けっこう。
つまりもし負けていたら、おまいさんは5円ほど損失を出していたというわけじゃな

…うん…まぁそーなるね

一方でこの売買、おまいさんは、“最初から1円抜きのつもりで買った”とも言った

……ええ。
言いましたけど…?

まとめると、“1円儲けるために5円損するかもしれないリスクを負った”ということじゃ。
この意味がわかるかな?

えーっと……
よーするに勝てば1円儲けだけど、負ければ5円損するってことだよね?

そーゆーことじゃ。確かに投機において勝率というのは大事な要素じゃ。
しかし、今のような売買を繰り返していると、例えば8割という高い勝率を叩き出せたとしても、最終的な収支はマイナスになってしまうわな

そっか……確かにそーだ

1分前、わしは買う前に損切りするメドを立てたほうがよいと言った。
これは言いかえれば、その売買において、それだけの損失なら許容してもいいと、あらかじめ宣言するということじゃ

へぇへぇ

しかし、一方でその売買において狙う利益が、いま宣言した損失よりも小さなものだとしたら、これはあまり効率のいい投機だとはいえないじゃろう

なるほど。
狙う利益が許容する損失より小さかったら、仮に勝率が5割だとしてもマイナスになっちゃうもんね

さよう。
そして逆に言えば、効率のいい投機とは、許容する損失を償って余りあるほどの利益を、常に狙っていくような投機と言うことができるじゃろう

うんうん。
例えば今回みたいに5円の損失を許容するなら、せめて5円以上の利益が狙えるような局面に仕掛けた方が効率的ってカンジか

すなわち損小利大。
投機家の目的とは、端的には、この損小利大が達成できる局面を探し当て、張り続けることにあると言って、過言ではないじゃろう

なるほど、損小利大かぁ。
つまりあたしが今までやってた投機は、言ったら損大利小だったから、最終的に負けちゃってたってことなのか

ふむ。まぁ大きな原因のひとつであると考えてもよさそうじゃな

ふーん。でもそっか。
損を小さく、ほんでその小さく抑えた損よりも大きな利を狙う、だね。
なんかわかってきたかも

ほほ

ヤバイ。もうなんか勝てそうな気がしてきた

ほほほ。
まぁ頭で理解はできても、実践するのはなかなか難しいもんじゃがの

え〜?そうかなぁ?
いや、いけるっしょ?だってなんかわかっちゃったもんなぁ

ほほ。まぁこれも経験してみるのがイチバンじゃからな。
またイロイロ試してみるとええ。
……さて、と、ところでお嬢さん

へぇ?

シリアスこそなかったが、まぁたマジメな話に終始してしもうた。
今回こそは、緩く落としてもらうぞ

んふふ。いいよ。
今ちょっと機嫌がいいからね

ほ。そうかい

株式投機とかけまして

ほ?

たわわに実った稲穂とときます

そ……その心は!? (ガタッ

もうからなければなりません (ドヤッ

……………………

……………………

Bravo!!

はいはい。
じじぃの賞賛とかもらったところで、一銭の得にもなりませんのでね。
はよおうちに帰ってカネ儲けの算段といきましょうかね。

それにしても損小利大とはイイコト聞いちゃったなぁ。
確かにこれさえ達成できれば、そりゃ勝てちゃうでしょってゆーか、むしろ負ける方が難しいまであるでしょ。
ガゼン金欲が出てきましたっ$¥

……っとまぁ、だいぶ気持ちよくなっちゃってるあたし。
腹立たしいことに、この損小利大を実践することの厳しさを、後にその心身をもって思い知ることになるのですが……

それはまた、次のお噺。