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第3編 代打ちのお龍



 かしむかしあるところに、ケンジロウという男がおった。 三度のメシより格ゲーが好きなケンジロウ。今日も今日とて筐体にかぶりついている。 そこへ、クラスメイトのお龍が通りかかった。
「ようケンジロウ。相変わらず大した熱の入れようだね」
「おうよ。今日は一世一代の大勝負。この10先ガチは敗けられねぇ。」
威勢はいいが、この男、下手の横好き。動きがまるで噛み合わない。
見かねたお龍、「こっちにゃあまり頼れる牽制がねぇ。立ち回りは慎重にだ。」とか、 「やっこさん、中段からのコンボは安い。あんまり立つ必要はねぇぜ。」 とか助言してみるも甲斐はなし。10本先取のガチンコ勝負、はやくも星を3つ落としちまった。


 こでケンジロウ、ひと息いれつつこう言った。
「驚いたぜお龍。おまえさん、ずいぶんと詳しいじゃねぇか。どうだい?代わりにやってみねぇか?」
「いいのかい?この勝負は敗けられねんだろ?」
「ああ敗けられねぇ。敗けられねぇから、巧いヤツに任せたいんだ。」
「へぇそうかい。まぁそーゆーことなら引き受けよう。」
強気の先方、誰が来ようが関係ねぇと、これをあっさり承諾。かくして、お龍が代わりを務めることとなった。
さてこの少女、達者なのは口だけじゃなかった。勝負が再開されるや、あれよという間に3連勝。これには先方、たまらず 「こいつぁ、チートじゃねぇのか!?」と探ってみるも、その気配はない。 そうこうしているうちに、更に3つの星を稼いだ。
「やっこさん、動きがわりと単調だ。定石通りにやってりゃ問題ねぇな。」
「大したもんだぜお龍。」
よろこぶケンジロウ。しかし続けて放ったセリフが、空気をガラリと変えることになった。
「これで村から追い出されずに済みそうだ。」
「は!?なんだって!?」


 けばこの10先ガチ、村のナワバリをかけた大勝負だったという。
「この調子で頼むぜ。」
「お...おう。」
ところがお龍、さっきまでがウソのように動きが鈍くなっちまった。仔犬みてぇに縮こまって、一方的に3連敗。
「おっとと、どうしちまったんだい?」
「な、なぁに、ここで引いたと見せといて、調子づかせて返り討ちよ。」
そのセリフとは裏腹に、雑な攻めをあっさりさばかれ、もう3連敗。とうとうあとがなくなった。不安を隠せないケンジロウに 「おめぇさん、背水の陣って言葉を知らねぇのかい!?自ら逃げ場を断ってこそ、地ヂカラが出るってもんよ。」 と強がってみるも、焦りがおさまる気配はなかった。


 あそのまま迎えた大一番、しかし、お龍の守りは堅かった。気味が悪いほどに堅かった。先方の攻めをまるで問題にせず、難なく1本取り返す。
これを見てケンジロウ、どうやらなんとかなりそうかと、胸を撫で下ろした、そのときだった。
物言いがついたのだ。
にわかに腰を上げる勝負審判たち。土俵上へと集まって、なにやらブツブツ話し始めた。ややあって、審判長が口を開いた。
「ただいまの競技について、ご説明致します。行司軍配は、お龍に上がりましたが、お龍のガードが堅すぎることについて、物言いがつきましたが、チートが確認されたため、お龍の反則敗けと致します。」
絶対に敗けられない戦い。そのプレッシャーから、お龍は自動ガードの反則ツールを使っていた。気付かれないよう仕掛けたつもりが、先方の探りにしっかり引っ掛かちまったというわけだった。


かくして、村を追い出されることが確定したケンジロウ。
「すまなかったな。」
謝るお龍の傍らに、審判長が寄って来てこう言った。
「ちぃとばかしチートが過ぎたな。」
そのシャレは、クスリとも笑えなかったが、
「おめぇさんも、格ゲー界から追放だ。」
その仕打ちもたいそう笑えなかったとさ。
めでたしめでたし。